「チョン付け」という言葉をご紹介します。
製造事業者の方はよくご存知かと思いますが、輸入事業者の方はあまり馴染みがないかもしれません。「チョン付け」とは、ハンダ付けで俗に使われる用語で、互いに触れただけ、あるいは載せただけの導体同士を、チョンとハンダ付けした状態を示す言葉です。
さて、わが家で長年使っていた電源タップの中をご覧ください。
黒と白の電線が、壁のコンセントに直接つながっている導線です。
まずは黒い導線ですが、左の写真のようにスイッチの端子に乗っかっただけの状態でハンダ付けされています。この端子には穴が開いているのですが、本来黒い導線はその穴を通され、端子にクルっと巻きつけた状態にして(これを絡げる、カラゲると言います)ハンダ付けするというのが基本的な接続方法です。ところが右の写真で分かるように、そんなふうには接続されていませんね。「チョン付け」にもいろいろな種類がありますが、これは代表的なチョン付けの一つでしょう。
次に白い導線に注目します。
端子の穴をガッツリ貫通していますが、ただ突っ込んだだけで、端子に絡げられてはいません。それよりも、右の写真を見てください。こんなもんがハンダ付けと言えるのか?というヒドい状態です。もしこれを買った直後に見ていたら、速攻で返品するレベル。これもチョン付けの一種と言えるでしょう。
微弱な電流しか流れないような回路においては、チョン付けでも問題無いケースはたくさんあると思います。しかしこれは壁のコンセントに直接差し込まれ、大きな電流が流れる電源タップです。そんな製品でチョン付けでは、安全性に問題が生じます。電源タップにおける最悪のシナリオは・・・、
導体同士の不十分な接続部の抵抗が大きい
↓
電流が流れることによってますます抵抗が大きくなる
↓
チョン付け部分が過剰に発熱する
↓
樹脂カバーが溶ける
↓
火災発生!!
ってな感じでしょうか。
火災の原因としてよく挙げられるのがタコ足配線ですが、タコ足配線によって、最大の定格電力を超えてしまうからダメなんですよ、というのが一般的に言われる話ですね。これはもちろん間違いではないでしょう。しかし、わが家にあるこの電源タップの場合はどうでしょうか。製品上の表示は、
警告!
容量を超えると焼損の恐れあり、火災の原因になります。
合計1500W以下でお使いください。
だそうです。いやいや、1500Wなんて恐ろしくて使えないですよ。タコ足配線でなくたって、こんなヒドいチョン付け部分に、15Aなんて怖くて流せないでしょう。部品の定格とか、導線の太さとか、そういうものは適切なものが使われているのだと思いますが、この電源タップの輸入事業者さん、中のチョン付け状態を知っててそれを言っとるんですか?と激しくツッコミたくなるところです。幸いわが家では、そんなにたくさんの電気製品をつないではいなかったので問題はありませんでしたが。
この電源タップを買ったのは2000年頃。家電量販店でした。電気製品の安全性に関する当時の法律は「電気用品取締法」で、電源タップのような製品は「甲種電気用品」と分類されていて、問題の電源タップにも右のマークが表示されています。
この電気用品取締法は簡単にいうと、電気製品の安全性を「お国が取り締まる」という趣旨のものでした。ところが、規制緩和ってことで2001年4月に「電気用品安全法」に変わり、経済産業省に認定された民間の検査機関でも安全性の試験を行うことが可能になりました。つまり、お国が取り締まっていた時代であっても、わが家の電源タップのような怪しい製品が普通に市場で売られていた状態が、規制緩和によってどうなったか・・・?という話です。
まあ、これ以上はもういいですね。電安法、知れば知るほど恐ろしくなります・・・。ちなみにこの電源タップは、ハンダ付けをし直しました。まだまだわが家で活躍してくれることでしょう。
製品安全・PSEコンサルタント
オフィス イリエ/横浜市
Since 2012
定休日:特になし
待ちに待った(?)電安法の解説本
<協力パートナー>
・RoHS指令、REACH規則ほか
・EU機械規則、SEMI等
・EU機械規則、リスクアセスメント等
・機械安全、機能安全等
あなたもジンドゥーで無料ホームページを。 無料新規登録は https://jp.jimdo.com から